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左リアドアとクォーターパネルにダメージを受けたアルファロメオ159スポーツワゴンの板金塗装修理をご紹介致します。
■損傷状況
オーナー様は左折時、電柱にばかり気を取られ、下にあったブロックに車を擦ってしまいました。リアドアとクォーターパネルの下部が酷く変形しています。
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リアドアを開けた内側(ロックピラー)もパネルが折れて鉄板がむき出しになっています。
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ホイールハウスも合わせ目が剥がれて口が空いてしまっています。
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アルミホイールも深く傷が入ってしまっています。
■修理方針
修理代もかなりかかりそうなので、今回はオーナー様の車両保険を使ってリアドアは取替、リアクォーターパネルは板金、アルミホイールは取替という内容でアルファロメオを修理させて頂くことになりました。
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■修理内容
リアクォータパネル、及びロックピラーを引き出し板金で修理します。
パネルの裏側に手が入らないので、損傷部分の塗膜を剥がしてから写真のようにワッシャーを溶接し、外側からパネルを引き出します。一度や二度の引き作業では元通りの形にはなりませんので、ワッシャーの溶接位置や数を変えて根気よく修理していきます。
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板金作業の終盤では手の平の感覚で凹みの戻り具合を確認しながら、出きらない箇所にワッシャーを溶接してコツンと引き、ワッシャーを外し、また溶接してはコツンと引く、こういった地味な作業を何べんも繰り返します。こうして変形したパネルを元通りの形にしていきます。
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板金で可能な限り修復した後は表面をきれいに脱脂してからパテを付けます。当社ではパテ痩せしにくい、耐久性に優れたパテを使用しています。硬く研ぎにくいので作業性はけっして良いとは言えないのですが、品質第一でこのヨーロッパ製のパテを使用しています。
パテが充分に硬化したら研いで仕上げます。
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板金修理と並行して、新品のリアドアパネルの建付け調整も行います。
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パテ研ぎが済むと、サフェーサーを塗装します。加熱乾燥で充分硬化させてから、研ぎ作業を行います。パテ研ぎでは取りきれないわずかなひずみやデコ(凸)を完全に取り切ります。サフェーサーの表面に黒の塗料がぱらぱら付着していますが、これは研ぎ作業をしやすくするための目印です。
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新品のドアパネルは今回、ウェットオンサフェーサーを使用しました。サフェーサーを塗装し、そのままカラーベースとクリアー塗料を塗り重ねられる種類のプライマーです。
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新品のドアパネルはサフェーサー塗装前の下処理段階でひずみや凸を完全に取りきっているので、サフェーサーの研ぎ作業が必要ありません。
事前に調色した塗料の色見を把握することができ、パネルの裏吹き作業も同時に行えます。
左側画像の白線で囲った部分をご覧ください。アルファロメオ159SWの元々のパネルはこのように色が完全に染まっていない部分があります。また、下塗りの色は薄いグレーとなっているので、先にグレーの塗装を行いオリジナルな感じに仕上げています。
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ロッカーパネルの一部も板金したため、チッピングコートをロッカーパネル全面に塗布します。表面のブツブツ感もオリジナル同様に仕上げるため、試し吹きを行ってから一気に塗布します。
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塗装工程では先ずインナーを塗装します。
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外板パネルの塗装では損傷を受けていないフロントドアにボカシ塗装を施しました。今回リアドアパネルを取り替えたことによってパネル全面を塗装するわけですが、そうなるとフロントドアとの色の差異を解消しなくてはなりません。
今回のアルファ 159スポーツワゴンの調色では2種類のパール(レッドパール、バイオレットパール)が配合されています。そのためどんなにしっかり調色しても、見る方向性によっては隣接するパネルとわずかでも色の差異が生じる可能性があります。そのためフロントドアにカラーベースのグラデーションを行います。
画像を拡大して白枠内の養生紙をご覧になるとお判り頂けると思いますが、リアドアとの境界部はしっかり色が染まっていて、前方に向かい色がだんだん薄くなっていきます。そしてフロントフェンダーとの境界部では養生紙に色がかかっていません。
このようにしてカラーベースのボカシ塗装をした後にトップコートの透明なクリア塗料をパネル全面に塗装すると、パネル間の色の差異が完全に解消できるのです。
保険修理では調色の難易度が高い塗色の場合、隣接パネルのボカシ塗装が認められます。
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修理完成です。アルファロメオ159SWはボディーガラスコーティングが施工されていて保証期間内でしたので、塗装したパネルの再施工も保険で認定されました。
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■修理結果
保険会社との修理協定金額は税込み774,900円(部品214,200円、工賃560,700円)となりました。
東京都立川市よりご来店くださり、当社にお車の板金塗装修理をご依頼頂き、誠にありがとうございました。元通り綺麗になった素敵なアルファロメオ159スポーツワゴン、どうか大切にお乗りください。