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新車で購入してまだ1ヶ月のBMW 320iの修理を神奈川県相模原にお住まいのお客様より依頼されました。
お客様は帰宅途中にバイクと軽い接触事故を起こしました。バイクは転倒することも無く、運転手も無傷でした。またその時は暗い夜道で車に損傷があるようにも見えなかったので、警察を呼ぶこともせず、バイクとはそのまま別れてしまいました。
翌朝、BMWを見て右のフロントフェンダーがへこみ、バンパーにも傷が付いていることに初めて気づいたというわけです。
お客様が加入している車両保険は自損事故は補償されないエコノミー車両保険(車対車+A)でした。
今回のケースでは、その場で警察を呼んで事故処理をしていれば相手車両の存在する事故ということで車両保険が適用されたのですが、相手の名前や連絡先も確認せずその場で別れてしまっているため相手を特定することができず、したがって自損事故でないことを証明できません。
お客様の保険等級は割引が一番高い20等級になっていたので、車両保険を使って修理したいところですが、残念ながら今回はBMWを自費で修理するほかありません。
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お客様が車を購入したBMWのディーラーではフェンダーは交換と言われたそうです。BMW320iのフロントフェンダーは部品代が4万円程とそれほど高くないのでBMWディーラーの見立ては間違っていないのですが、自費での修理となると少しでも出費を抑えたいところです。
インターパシフィックでご提案させていただいたBMWの修理方法は以下の通りです。
1.フロントフェンダーは板金で修理
2.フロントバンパーは傷を修理して部分塗装できれいに直す
3.購入時にボディーコーティングを施工しているので、フェンダーとバンパーにガラスコーティングを再施工
これらの修理内容でご提示させていただいたお見積り金額は税込み126,735円です。
フロントフェンダーを取り替えるとフェンダー全面にボディー色を塗装しなくてはなりません。その場合、隣接パネルであるボンネットとフロントドアとの色の差異が少なからず生じてしまいます。メタリックやパールが含まれる塗色を100%再現するのは大変困難です。不可能と言って過言ではありません。色の差異は特にフロントドアとの間で目立ってしまいます。そうなるとフロントドアにボカシ塗装(詳しくは後述)をしなくてはなりません。
今回BMW320iのフェンダーのへこみは前方部分でしたので、上手に板金すればドアとの境界部分にベースコート(ボディー色)を塗装せずに作業できるので修理範囲を小さくでき、費用を抑えられることもご説明し、お車をお預かりさせていただきました。
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フロントフェンダーの板金作業には当て盤とハンマーを使います。バンパー、ヘッドライト等を脱着し、フェンダーの裏側に当て盤をあてがい、表からハンマーを使いへこみを修理します。
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できるだけ元通りの状態に近づけます。
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鉄板の表面をきれいに脱脂洗浄し、パテを付けます。硬化したら研いで仕上げます。
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端が傷付いたフロントバンパーはサンダーで傷を削ります。この程度であればパテは使わず修理できます。
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バンパーとフェンダーの修理部位にサフェーサーを塗装してシールします。加熱乾燥で塗膜を硬化させます。
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2枚の画像はサフェーサーを耐水ペーパーで研いで仕上げ、塗装ブースの中でマスキングを済ませ塗装の準備が完了した場面です。
左の画像をご覧頂くとわかりますが、フェンダーの前半分は色が薄くドア寄りの後半分は色が濃くなっています。前半分はサフェーサーが塗られていますが、後半分は塗装の密着を良くするためトップコートの塗膜の表面を水研ぎしただけです。
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左の画像をご覧ください。養生紙を被せているだけでテープで留めていません。これらの作業はボカシ塗装をするための下処理なのです。
「ぼかす」というのはいわば業界用語で、皆様にとっては意味不明の用語だと思いますので、ボカシ塗装についてご説明させていただきます。
私たちは車の板金塗装 修理に際し、常に「ぼかせるかぼかせないか」という視点で傷やヘコミの状態を見ています。ボカシ塗装はそれができるかどうかで修理金額や出来栄えさえ変わってしまうので、車の修理塗装にはとても重要なことなのです。
また、ボカシ塗装は2通りありまして、ボディー色であるベースコートのボカシとトップコートであるクリア塗料のボカシがございますので以下ご説明いたします。
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先ずベースカラーのボカシについてです。
画像を拡大してご覧頂くと赤枠で囲んだフロントフェンダーとドアの境目の養生紙には色が付いていないことがお分りいただけると思います。そして他の部分では養生紙にしっかりボディー色が付いています。
これはフェンダーの後部には色をかけていないということです。グラデーションのように色を薄めて塗装するので、ドアとの境目では元色のままなのです。その上にクリア塗料をフェンダー全面に塗装します。そうすることでフェンダーとドアの色の差異は解消でき、どの角度から見ても、日向でも日陰でも同じ色に見えるのです。
それでは調色の精度が高くなくてもぼかせれば良いのかというとそうではなく、ボンネットとの色の差異や違和感がないまでに精度は高めなくてはなりません。ドンピシャの100点にはできなくても95点位の調色精度にまで持っていき、そのうえで「ぼかす」のです。色合わせというのはそれほどシビアなのです。
今回のBMWのフェンダーのへこみがもう少し後にずれていたら、フェンダー内でベースコートをぼかすのは難しかったと思います。
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次はクリア塗料のボカシについてです。
バンパーの右端の傷を修理した部分にベースコートを必要範囲塗装しぼかします。その上にクリア塗料を吹き付けるのですが、部分塗装で仕上げるためどこかで塗装を区切らなくてはなりません。
ただどこかにテープを貼り付け、そこで区切ってしまうと塗膜の厚みの分だけ段差ができてそこで塗装を切りましたというのが見た目で判ってしまいます。これではプロの仕事にはなりませんので、クリア塗装をぼかして段差が出ないように、凝視しても判らないように仕上げる必要があります。
今回の場合、赤枠で囲んだ2ヶ所でトップコートをぼかします。ぼかしたい部分はクリア塗料を薄く塗装します。そして硬化した後ポリッシャーで磨いて仕上げるとぼかした部分は全く判らなくなります。ただしぼかしたのはトップコートのクリア塗料ですので、塗膜の薄い部分の耐久性は強くありません。将来ボカシ目が出てシミのようになることがあります。そのためなるべく狭い幅の部分でぼかして耐久性の弱さをカバーします。
クリア塗料のボカシはできる場所が限られます。バンパーの端やコーナーの傷の修理には適していますが、ボンネットやドアなどでは行いません。ぼかす範囲が広くなってしまうため、仕上りもきれいではないですし、ボカシ目が出るとかえって美観が悪くなるからです。
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今回のケースでは、その場で相手と別れてしまった為に車両保険が使えずお客様にしてみれば予期せぬ出費となってしまいましたが、新車で納車されてまだ1ヶ月のBMW320iということで金額だけではなく高いクオリティーで仕上げる必要がありました。
お車をお引き渡しするときに、お客様から「修理したところが全くわかりませんね」とおっしゃって頂きました。判ってしまう仕上げではプロとしてお話にならないのですが、いつ言われても嬉しいお言葉です。
このたびはBMW320iの修理をご用命頂き、誠にありがとうございました。丁寧に修理させていただきましたので、安心してお乗りください。