東京都内にお住いのお客様よりBMW 320iクーペの自費での板金塗装 修理を依頼されましたので事例をご紹介します。
【ご依頼の経緯】
(左ハンドルの)運転席側ドアを開けたまま誤って機械式駐車場を降下させてしまい、ドアパネルを酷く変形させてしまったので、修理費用などを相談させてほしいとの内容でメールでお問い合せを頂戴しました。メールには積載車に積まれたBMWの画像が添付されていました。
BMWの正規ディーラーに車を入庫させたところ、ドアパネルだけでなく取付け部のヒンジとAピラーも変形しているので、70万円以上の修理費用がかかると言われたそうです。お客様はあいにく車両保険に加入していなかったので、自費でBMWを修理しなくてはならないとのことでした。
BMWディーラーから外注の板金塗装工場に車両を移送し、ドアなどの部品をある程度取り外して正式な見積を提示してくれることになっているそうで、それを待っている最中とのことでした。
ダメージが酷くドアがキチンと閉まらない状態では、ひとまずディーラーからBMWを引き上げて当社に見積もり来店するということもできないので、BMW正規ディーラーからの見積書が届いたらそれを見せていただく事になりました。
BMWディーラーからの見積書は2通りでした。一つはドアのヒンジとAピラー(画像赤枠内)を板金で修理した場合で約85万円、もう一つはそれらを取替えた場合で約110万円でした。フロントフェンダーも修理塗装が必要で、塗装は色の差異を無くすために行うリアクォーターパネルへのぼかし塗装も作業に含んだ見積でした。
見積書はディーラーの外注先の板金塗装工場がある程度部品を取り外してダメージを確認して算出しているそうなので、見積書通りの損傷を前提に当社で修理した場合の費用を算出することにしました。
当社の見立てでは、画像を見ただけで現車は見ていないものの骨格部位のAピラーを取替えるほどのダメージとは思えませんでしたし、何より板金できるからAピラーを板金で修理した場合の見積が出ているのでしょうから、BMWディーラーが作成したヒンジとAピラーを板金した場合で同じ作業内容で見積もってみました。
当社の概算見積では最悪でも70万円を上回ることは無く、「最悪70万」を覚悟していただけるのなら当社でBMWディーラーに車を引取りに行き、修理方法含め最善を尽くしますとお伝えしました。BMW320iクーペは自走できる状態ではなかったので、現車を拝見できない状況では、お客様にはそうお伝えするほかありませんでした。
お客様から修理のご依頼を頂き、お客様に代わって車をBMWディーラーから引き取り当社工場で現車を拝見したところ、ヒンジとAピラーに目視でわかる変形はありませんでした。
最終的には新品のドアパネルを取り付け、隣接パネルとの隙間や面の出具合などの立付けを確認しなくては断定できませんが、もし多少の歪みがあったとしても軽度な板金作業で済むレベルと判断しました。フロントフェンダーはドアとの境目のエッジ部が傷付いていたレベルでした。
【お客様への修理方法のご提案】
お客様には以下のご説明をさせて頂きました。
塗装の調色に関して、いくら熟練した腕の良い塗装職人でも100点満点の色合わせはできません。塗装色によっては、98点の精度で調色できても隣接するパネルと色の差異が生じることもあり得るのです。その色の差異を解消するために「ボカシ塗装」を行います。例えば今回のBMW320iクーペの場合には新品に取り換えたドアに調色した白のベースコートを塗装し、さらに隣接するフロントフェンダーとリアクォーターパネルのドアに近い部位にも白のベースコートを塗装します。そしてドアから遠ざかるにしたがってグラデーションのように徐々に塗料を薄く塗装するのです。そのうえで3パネルにクリア塗料をしっかり吹き付けると、色の差異は全くなくなり、BMWの塗装肌を綺麗に再現させることができるのです。
いくらソリッドの白でも黒、黄、赤、青などの原色を混ぜて色を合わせていくのでどうしても100点満点の調色というわけにはいかないのですが、メタリックやパールが入っている色に比べれば色の差異はわかりにくいので、それを承知して頂ければ取替えるドアだけを塗装して終わらせることも可能です。
また、フロントフェンダーはエッジ部の傷だけなので、傷を上手に最小限に削り落とし、マスキングを工夫してエッジ部だけ塗装すれば、ほぼ判らなく仕上げることができます。
その内容で修理すれば、ずいぶん修理費用は抑えられます。
お客様は即座にその方法でお願いしますとおっしゃってくださいました。
【修理内容】
新品のドアパネルをBMWに取り付け立付けを確認したところ、ヒンジもAピラーにもダメージはありませんでした。
入念に調色を行い、塗装ブースの中でドアパネルを単体で塗装しました。車に取り付けて塗装するより、単体塗装のほうがゴミやホコリの付着するリスクが少なくきれいに塗ることができます。
塗装したドアパネルをしっかりと加熱乾燥させ、磨き作業を行います。そして部品を組み付ければ修理完了です。フロントフェンダーもエッジ部だけの塗装できれいに仕上がりました。
色も隣接パネルと比べて全く違和感なく仕上がりました。
隣接したパネルとの隙間も全く問題ありません。
BMW320iクーペの修理費用は、税込349,726円(部品代223,863円、工賃125,863円)となりました。
今回は自費での修理ということでお客様には痛い出費となってしまいましたが、ダメージがドアパネルにほぼ限定されていて、なおかつボディー色が白だったのが不幸中の幸いでした。
当初BMW正規ディーラーから提示された見積りは、約85万円と約110万円でした。そして当社の概算見積は70万、最終的なご請求額は約35万円でした。
正規ディーラーは自社で板金塗装をしているわけではないので、どうしてもノーリスクな見積もりになってしまいがちです。
これはメーカーの看板を背負っている以上致し方ないことかもしれません。
しかしノーリスクな修理だと、安全を考えて部品を多く取替えますし、塗装範囲も広くなってしまうので修理費用はその分高くなってしまいます。
保険修理のようにお客様が修理費を気にせず、仕上がりだけを気に掛ければ良いのであれば、修理する側もお客様も修理結果にリスクをとる必要はありません。
しかし自費での修理の場合には費用をできるだけ抑える必要がありますので、ノーリスクな修理方法以外に別の方法が有るのかどうか、またその場合のメリットとデメリットは何かをお客様にきちんと説明しなくてはなりません。
今回のBMWのケースでは、ドアだけを塗装することで費用は抑えらえるが、多少なりとも色の差異が生じるリスクがあるということです。
こういった修理方法の説明や提案となると、ディーラーより当社のような町の板金塗装工場のほうが得意だと思います。
今回のお客様は費用を抑えることによる修理のリスクをよくご理解くださり、そして何より現車を拝見しないと正確な見積もりができないということをご理解した上で修理を依頼してくださったので、それでも痛い出費に変わりはありませんが、最適な修理をさせていただく事が出来たと思います。
修理結果としましては、色の差異も無くフェンダーのエッジの傷の修理痕も判らなくできましたのでデメリットはありませんでした。お客様にも満足していただく事ができました。
このたびはインターパシフィックにBMW320iクーペの板金塗装修理をご用命くださり、誠にありがとうございました。
元通りになったお車を大切になさって下さい。
関連記事:板金塗装修理の「松・竹・梅」
BMW320i Coupe オーナー様
コメントを頂戴し、ありがとうございます。
物やサービスには、クオリティーや金額に応じた「松竹梅」があります。
食べ物であれば食材の質や量、ホテルで言えば部屋の豪華さやホテル自体のランクなどによって「松竹梅」が分かりやすいのですが、板金塗装はお客様側からそれが分かりにくいことが問題だと思います。
BMW含めほとんどの車種には料金を算定するうえで基準となる物差し(工数表)がありますので、本当は「松竹梅」を明確にできなくてはならないのですが、現実は見立てや値決めをする人によってかなり違いがでることが多いようです。
ですから今回のように金額や修理方法、対応等に少しでも疑問を感じたら、躊躇せず他社に相見積とセカンドオピニオンを依頼することが後悔やトラブルを避けるうえで望ましい事なのだと思います。
当社はオーナー様にリスクのお話しをしても、失敗しない自信がなければ修理をお引き受けしませんが、それでも修理したことが全く分からないと喜んでいただけると、この仕事をしていて良かったなとつくづく思います。
このたびの一件でBMW320i Coupeオーナー様とご縁ができたことをありがたく思います。私共には御用が無いことが何よりですが、鈑金塗装以外にもお車のことでお困りのことがございましたら、何なりとお気軽にご連絡ください。
インターパシフィック・千村尚紀
大切なお車を何事も無かったかのように
大切なお車を
何事も無かったかのように
インターパシフィックは長年にわたり高級輸入車の板金塗装を数多く手掛け、技術を磨いて参りました。
難易度の高い修理に対応する最新設備を導入し、厳選した塗料や材料を使用することで、高い修理品質を実現しております。
私達は、大切なお車が「ちゃんと元通りに直るのだろうか?」というお客様の不安を安心と喜びに変えることを最大の使命と考え、完成まで一切手を抜きません。
どこをどう直したのか全く分からないように、完璧な仕事を心掛けております。
本当に貴社に修理依頼をして良かったです!
素人の自分の目には完全に元通りになったクルマを見て、DLRの提携工場で一度各部品を外し確認してもらった上で提示されたと言われたDLRの修理見積金額と、今回貴社にお支払した金額の大きさに驚きつつ、(自分の経済的な余裕の無さもあってですが)安易にDLRへ修理依頼をしなくて良かったと思っています。
車を購入したDLRは自社で鈑金を行っておりませんでしたので、提携工場に外注しているからかも知れませんが杓子定規的な対応で、経済的に困っている自分の気持ちや自分が求めていた修理精度を理解した上での説明、提案を行ってくれていませんでした。
千村様からの提案は自分の求めていたレベルでの提案や想定していた状況とならなかった場合のリスク説明等を親切にしていただけましたし、HPに掲載されていた過去の事例を事前に閲覧させていただいていたので、不安なく修理の依頼が出来ました。
自費での修理でしたので金銭的な問題から、自分では修理した箇所が判るけど、車に無頓着な家族は気づかない。という程度の仕上がりで仕方ないと思っていたのですが、修理後の車の状態は自分にも全く判らないと言える状態で、大変感謝しています!
ありがとうございました。
余談ですが、
家族がかなりDLRに不信感を持ってしまったという、別の問題が発生してます。(笑)
(長文・乱文ですみません)