左側面とリアサスペンションに大きなダメージを受けたBMW 335iの板金塗装 修理です。今回はフレーム修正機を使った高精度な事故車復元について詳しくご説明させて頂きます。
■損傷状況・原因
オーナー様は青信号で交差点を横断中、信号無視の車に左後側面をぶつけられてしまいました。100%被害事故です。
まだまだ大切に乗り続けたい車なので時間はかかってもいいから、とにかく完璧に直して欲しいとのご要望でBMWをお預かりさせていただきました。
ドアもさることながらリアフェンダーは特に酷い損傷を受けており、左後のタイヤ&ホイールも直撃されており、サスペンションもダメージを受けています。
■フレーム修正
計測単位がなんと0.1mmという高精度の3次元フレーム計測機セレット ナジャ(CELETTE NAJA)で診断した結果、リアサスペンションの取り付け部にダメージを受けていることが判明しましたので、フレーム修正機を使った高精度な板金修正作業が必要と判断しました。
外装部品やリアサスペンションを取り外し、フレーム修正機にセットします。
インターパシフィックではフランス セレット(CELETTE)社のジグ・ベンチ式フレーム修正機を導入しております。通称セレットベンチと呼ばれ、メルセデスベンツ・ポルシェ・BMW・アウディ・フォルクスワーゲン等、ヨーロッパの主要メーカーから指定・推奨を受けている世界標準とも言えるフレーム修正機です。
■セレットベンチ
セレットベンチは修正誤差1mm以下の高精度なフレーム修正作業が可能です。
写真がジグと呼ばれるものです。赤丸で囲った部品が「基本タワー」です。色々な種類の高さがありますが、この部分は全車種共通部品です。
黄色で囲った部品が「MZジグ」と呼ばれ、その車専用のジグです。従ってこのジグはBMW E90専用のジグということになります。
これがBMW E90のデータシートです。このデータシートに従ってセレットベンチの上に必要に応じて基本タワーとMZジグをセットします。
基本タワーとセレットベンチ、MZジグと車体はそれぞれボルトで固定されますが、基本タワーとMZジグはピンで固定されます。
フレームにダメージがなければ基本タワーの穴とMZジグの穴はピッタリ合わさり、ピンがスムーズに刺さります。
フレームに曲がりや歪みがあればピンは刺さりません。そのため、わずかなフレームの歪みであってもどのくらい穴がずれているかを目視で確認することができるので、正確なフレーム修正ができるというわけです。
この穴にわずか数本の髪の毛がはさまっていてもピンはスムーズに刺さりません。だから1mm以下の高精度でフレームを修復できるのです。
”合うか”、”合わないか”、この単純にして合理的なところが、セレットベンチの凄さなのです。基本タワーとMZジグの穴がピタリと合って、ピンがスムーズに刺さればダメージは無いということで、合わなければその部位のフレームを修正し、合うようにすれば良いのです。
セレットベンチを使ったフレーム修正に失敗はありません。車の精密なフレーム修正には最も信頼度の高い修正機と言えるでしょう。
■具体的修理工程
セレットベンチに載せたBMWのフレームを修正するために、ベンチにプリングユニットを取り付けて作業します。
ダメージを受けた箇所を10トンのパワーで色々な角度に引っ張ることができます。
必要に応じて複数の部位を引っ張ります。
リアフェンダーを切開し、内側のインナーパネルも引っ張り出します。パネルに受けた強いダメージがフレームに影響する場合もあるのです。
フレーム修正が完了すると再度セレット ナジャ(CELETTE NAJA)でボディー計測を行います。左の画像が修正前、下が修正後のレポートです。
インターパシフィックではお客様に安心してお車をお乗りいただくため、完全修復の証として、フレームのダメージを数値化しレポートとして提出させていただいております。
(修正後レポート)
フレームの修正が終わると、パネルの交換作業を行います。リアフェンダーはボディーに溶接されているパネルですので、ドリルやエアーソーを使ってボディーから切り離します。
インナーパネルを板金し、ホイールハウスはつぶれていたので交換します。仮合わせしてからバイスで固定します。
ミグ溶接機を使ってホイールハウスをボディーに溶接します。
防錆処理、塗装を施し、インナー側が仕上りました。
リアフェンダーパネルを取り付けます。
スポット溶接機を使い元通りの強度になるよう、丁寧に溶接を行います。
リアフェンダー取付完了です。
新品のドアを仮付けし、建付けやパネル間の隙間などを入念にチェックします。
< ドア、リアフェンダーにプライマーサフェーサーを塗装します。加熱乾燥により完全硬化させます。
オリジナルに忠実に防錆シーラーを塗布します。
ホイールハウスにはチッピングコートを塗布します。
パネルの裏側を塗装します。
外板パネルを塗装する前に内部塗装を済ませます。
熟練の塗装職人によって、BMW独特の塗装肌に仕上げていきます。塗装作業はゴミやホコリをシャットアウトした塗装ブースの中で行います。
■修理結果
あんなに酷い事故に遭ったのに、BMW 335iはご覧の通り何事も無かったかのように完璧に仕上がりました。
サスペンションやタイヤ&ホイールも新品に交換し、四輪アライメントの数値もバッチリです。
加害者側の保険会社との修理協定金額は税込み2,519,843円(工賃1,197,252円、部品代1,322,591円)となりました。すっかり元通り、綺麗に直ったBMW 335iと久しぶりに対面したオーナー様には大変ご満足して頂けました。
お客様は当社が加盟している鈑金匠ネットのENEOSプリカ還元サービスを希望されました。鈑金匠ネットでは税込修理代金10,000円につき500円分のENEOSプリカを加盟工場で修理されたお客様にプレゼントしております。今回のBMW 335iのように対物保険で修理した場合でもプレゼントの対象となります。今回は125,500円分のENEOSプリカをプレゼントとなります。全国のENEOS(新日本石油)のサービスステーションはもちろんのこと、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなどでもご利用いただけます。
このたびはインターパシフィックにBMW 335iの板金 塗装 修理をご用命くださり誠にありがとうございました。