ここでは実際に三次元フレーム計測装置 セレット ナジャ(CELETTE NAJA)やジグ・ベンチ式フレーム修正機などを使用し修理した、ポルシェ カイエン ターボの自動車修理 板金塗装事例をご紹介いたします。
修理金額が800万円を超える大掛かりな事故修理でした。
1.修理箇所確認・各部脱着
この車はフロント廻りに→の方向から衝撃を受け、ボンネットまで曲がってしまっています。
フロントメンバーは完全に左方向へ歪んでしまっていて、フレームまで損傷を受けていることは確かです。
三次元でフレーム計測ができるセレット ナジャで損傷状態を確認する準備をおこないます。通常、フレーム計測する場合は脱着をしなくてもできますが、今回は修理をおこなう前提ですので、この段階でエンジンや補器類、サスペンションも降ろします。
2.詳細な損傷状況をセレット ナジャ(CELETTE NAJA)で確認
どの部位まで損傷があるのかを明確にするため、セレット ナジャ(CELETTE NAJA)で三次元計測を行なう準備をします。
セレット ナジャ(CELETTE NAJA)のレールを車両下にセットし、コンピュータが指示する部位を測定します。すると、基準値からどのくらいずれが生じているかが0.1mm単位で表示されます。
測定データはこのようにプリントアウトすることもできます。このポルシェ カイエン ターボは全体的に左方向へ歪み、サスペンション取付部にも歪みが発生していることがわかりました。
3.板金:フレーム修正機にボディをセットし修復
セレットのジグ・ベンチ式フレーム修正機にボディをセットします。
歪みのある部位にはジグは合いません。ジグに合っている部位は正常ということになります。
ジグに合わない部分を引っ張ったり押したりして、正常な位置に合わせていきます。衝撃を吸収するため折れ曲がってしまい、板金では修復が不可能な部分は補強を入れて交換します。
新品のパーツをジグに合わせてフィッティングし、溶接をしていきます。フレームに高張力鋼を使用しているため、溶接機も高性能なものを使用して作業します。
4.板金:各部の溶接
ホイールハウジング内部は蓋がつくので隠れてしまいますが、このような部分にもきちんと防錆処理をおこない、塗装を施します。
ホイールハウジングの蓋やその他前廻りの接合部分を確実に溶接していきます。
スポット溶接跡を丁寧にきれいに仕上げ、溶接完了となります。ジグにも寸分の狂いも無く合っています。
5.錆止め・下地処理・防水処理
溶接箇所を中心に2Kプライマー(錆止め)を塗布していきます。2Kプライマーは錆止めの意味とパテや塗料の密着をよくするために用います。
まだホイールハウジング上部のパーツなどの取り付けがありますが、組み付けてからでは塗布できない部分があるので、一旦サフェーサーを塗布します。その後、下地を足付け(極細ペーパーをあてる)し、下色のグレーを塗布します。
部品単体で下色の塗布まで終わったボルトオンのパネルを組み付け、防水・防錆処理のためシーラーをオリジナルと同様に入れます。この後ボディー色を塗布します。
パネルのサフェーサーの乾燥を行ないます。赤外線のヒーターではパネルくらいの大きさになると均一に乾燥が出来ないため、当社ではプライマー乾燥でもブースを使用します。
6.修正後のボディ計測・仮組み付け・建てつけ調整
修理されたボディをセレット ナジャで再度、三次元測定します。通常、ジグ・ベンチ式フレーム修正機で修復したものは寸法違いは起こりませんが、ベンチでは分らない微妙なジオメトリーを測定し、確認します。
チェック結果は、全てのポイントにおいて0.1mmたりとも基準値からの狂いはありませんでした。
車体のチェックが終わったので、エンジンや電装系、内装などの組み付けを行います。今回はパーツが全て本国オーダーだったので部品が入ってくるまでかなり時間がかかりました。
リフトやベンチに設置した状態で、パネルの建て付けを行なっても、車両が地面に接地するとクリアランスが変わってしまいます。タイヤを取り付けてリフトから降ろした状態でパネルを取り付け、建てつけ調整を行ないます。
7.塗装:ベースコート~クリアコート塗布
色合わせを入念におこない、ベースコートを塗布します。この作業の前に、塗料を確実に密着させるため、足付けを丁寧におこないます。
ベースコート塗装の上にクリアコートを塗布し、ブース内で充分に加熱乾燥させます。
8.パーツ組み付け・納車整備
残りのパーツの組み付けを行い、パーツやパネルのクリアランスなどを確認し、ボディーを磨き上げます。
お納車前に、再度各部の点検をおこない、四輪アライメント調整、テスト走行を実施し、洗車、室内クリーニング等をおこない、作業完了となります。