板金塗装の工程 | 板金塗装はインターパシフィック

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作業工程
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作業工程

アルミパネルの板金

近年、車体の軽量化を目的として、自動車の車体や外板パネルにアルミニウムを採用する車が多くなっています。
軽量化の目的は走行性能や燃費の向上です。アルミニウムは比強度が鉄の約2倍です。従って、設計強度で同じ強度の部品を得ようとすると、アルミニウムの部品は鉄の部品に比べ重量を半分近くまで軽量化することができます。

車の走行性能や燃費が向上するということは大変すばらしい事なのですが、事故などでアルミのパネルをへこませてしまったりすると、鉄のパネルに比べ修理が難しい、修理費用が高いという問題が生じます。

フェンダーやドア等、アルミニウム製の車の外板パネルの板金修理は鉄に比べてとても難しいのです。そのため鉄のパネルであれば簡単に板金できるレベルのダメージでもアルミのパネルでは板金できずに新品パネルに取替えとなってしまうことが多いのです。
またアルミの新品パネルは高額なので、部品代と工賃を合わせた修理代がとても高くなってしまいます。そのため自費での板金塗装 修理の場合にはカーオーナーさんの金銭的なご負担が多くなってしまいます。

ではどうしてアルミパネルの板金は難しいのでしょうか。
アルミニウムは非常に繊細なので、引出したり叩き出したりしてへこみを直す板金作業によってクラックや割れが生じやすいのです。鉄製のパネルの場合にはそういう心配はあまりありません。
もう一つには、アルミニウムの溶接特性の問題です。へこんだパネルを板金で修理する場合、パネルの裏側に作業者の手が入れば、当て板などの工具を使って裏から凹みを押し出し表側からは板金ハンマーで軽く叩きながら面を整えていくことができるのですが、パネルの裏側に手が入らない場合にはへこんだ部位にピンやワッシャーなどのビットを溶接し、へこみを表側から引出して板金作業を行わなくてはなりません。
しかしアルミニウムは、集中した熱が加わり難く融点が低いので、溶接がとても難しいのです。
鉄の約3倍も熱が逃げやすいのに溶融温度が低いので溶け落ちし易いのです。つまり溶接の開始段階では熱伝導が良いので、熱が逃げて溶け込みにくく、融点は低いので、途中から急に溶け落ちしてしまうという現象が起こるのです。そのため自動車のアルミボディのような薄板材料の場合には特に溶接の入熱管理が難しくなるのです。
さらにアルミは鉄に比べて溶接によるひずみが大きくしかも取りにくいのです。

※他にも溶接を難しくする特性がいくつかあるのですが、ここでは省略いたします。

そのような理由があり、自動車の鈑金塗装に於いてはそれほど大きな損傷ではなくても板金はできないと判断され、新品パネルに交換という高額な修理見積が提示されてしまうのです。

しかしアルミボディの車が珍しくなくなった昨今、アルミ補修が必要とされています。
インターパシフィックでは最新のアルミ専用のスタッド溶接機を導入し、アルミパネルの板金修理を行っていますので、その手法についてご紹介いたします。

低いブロック塀にドアとステップカバーをぶつけてしまったアウディTTのアルミ製ドアパネルの板金作業です。
鉄のパネルであればどうということのない、大したことのないへこみなので板金作業は簡単です。しかしアルミ製となるとこの程度でも簡単にはいきません。

イタリア TELWIN(テルウィン)社製のアルミスタッド溶接機を使ってへこみを修理していきます。熱が加わり難いのに溶けやすいアルミの溶接特性のため、従来のスタッド溶接機ではへこみの急所を引出し作業に耐えられる強度で溶接することができませんでした。


へこみに引出しのためのビットを溶接します。電流が低いとしっかり溶着しませんし、高いとアルミは簡単に溶けて穴が開いてしまいます。引き作業に耐えられる強度でビットを溶接するのがとても難しいのです。

アルミは酸素と反応して5分程で酸化膜ができてしまいます。酸化膜があると通電性が悪くなり溶接が難しくなります。酸化膜は無色透明ですので目視ではわかりませんので、研磨紙などで表面を磨きながら酸化膜を除去し、アルミ製のビットを溶接していきます。

小さなエクボのような凹みではないので、ビットを並べて複数溶接します。

プリングバーという引出しツールを用いて、繊細なアルミパネルを少しずつ慎重に引出します

ハンドルを回すとビットにアルミパネルを引っ張る力が加わります。

アルミは冷えた状態で引き出そうとするとクラックや割れが生じやすく、とても繊細です。そのためガスバーナー等で200℃程度の余熱を加え、母材を柔らかくしながら慎重に引出します。

表面をアルミハンマーで軽く叩きながら板金します。


引出し板金が終わるとアルミ製のビットをニッパーで切断します。ビットをねじって取ろうとすると、アルミパネルに穴が開いてしまうのでニッパーで切断します。

そして残ったビットや溶接の焦げをベルトサンダーできれいに削り落とします。

僅かに残る凹凸にはパテを付けて平滑に成形します。

板金した部位にサフェーサーを塗布し、しっかりとシールします。赤外線ヒーターで加熱し十分にサフェーサーを硬化させます。

ゴミや埃をシャットアウトした塗装ブースの中で熟練の塗装職人が丁寧に塗装を行います。

へこんだパネルは元通り綺麗になりました。
自費での修理の場合には、ディーラーなどで板金ができないと言われ、新品パネル取替の高い見積額を提示されると、さすがにカーオーナーさんもはいそうですかとその場では修理を依頼せず、他社に車を持ち込み見積を比較検討されるかと思いますが、車両保険に入っていると、そんなに修理代がかかるならと保険を使って修理されるカーオーナーさんもいらっしゃると思います。
しかし今時は保険を使うと翌年からの保険料の値上がりが大きくなるので、板金でアルミパネルが直せるのであれば、保険は使わずに自費で修理したほうが良い場合も多いかと思います。

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車の板金工程

■板金

自動車の板金塗装の工程は、板金作業と塗装作業の2つに分かれでおり、板金職人と塗装職人によりそれぞれの作業を行います。
中には板金と塗装の両方を一人でこなせる器用な人が居ますが、それでも得意なのはどちらか一方ですので、ほとんどの場合、板金と塗装はそれぞれの職人による分業となります。

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板金は、車をぶつけたり擦ってしまったことによって生じた鋼板のヘコミを専門の工具を使って叩いたり引出したりする作業です。鋼板の裏側に手が届けば裏から叩き出して成形します。しかし裏側からアプローチできない場合には、凹んだパネルにピンやワッシャーを溶接し、そこに専用工具を取り付けて外側から凹みを引き出す方法で板金を行います。
ヘコミを裏側から押し出す、あるいは叩き出すというのは、板金作業として何となくイメージしやすいかと思いますが、表から凹みを引出して板金するというのはイメージしにくいかと思いますので、お客様から修理依頼されたメルセデスベンツを例に、パネルの表から引出してヘコミを直す板金作業の工程をご説明します。

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ドアパネルの凹んだ部位の塗膜をエアーサンダーで削り落として、鉄板をむき出しにします。

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ヘコミを引出すためには、スタッド溶接機を使用し、一時的にへこんだ部位にワッシャーを溶接します。

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ヘコミの範囲に応じてワッシャーを溶接していきます。パネルの裏側が焼けないように電流を調節して溶接します。

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プルプレートという工具を使ってワッシャーを連結させ、スライディングハンマーの先端のフックを引っ掛けます。

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スライディングハンマーというのは、振り下ろして叩くハンマー(トンカチ)とは逆の作用をする工具です。
穴の開いた重りに棒が通っていて、重りを手前にスライドさせてストッパーにぶつけ、その衝撃を利用してヘコミを引出す工具です。

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溶接した複数のワッシャーに棒を通して、一つに束ねたプルプレートにスライディングハンマーの先端のフックを引っ掛け、重りを前にスライドさせます。

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重りを後ろにスライドさせ、手元のストッパーにぶつけると、その衝撃で凹みが引き出されます。

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鉄板が出過ぎてもいけないので、力任せではなく少しずつ引き出し、慎重にこの作業を繰り返し行います。
ワッシャーはそれほど強力には溶接されていないので、ペンチで捻じると簡単に取れます。必要に応じて溶接する場所やワッシャーの数を変えて引き出します。

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高くなった所は、板金ハンマーでコツコツと叩いて戻します。

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小さなヘコミは、先端を直接パネルに溶稙できるプーラーをスタッド溶接機の先に付け、ピンポイントで引出し板金を行います。

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最初に使ったスライディングハンマーの小型版ですが、同様に重りをスライドさせてその衝撃で凹みを引出します。

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手のひらで板金した面の凹凸を確認しながら、極力元の面になるように板金します。

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面出しが済むと、板金によって延びてしまった鉄板を加熱して絞る作業を行います。
鉄板は延び過ぎてしまうと、その部分がベコベコした状態になり、押すと凹んだまま元に戻らなくなるほどになってしまいますので、絞り作業で鉄板を縮める必要があります。

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絞り作業によって、お灸の痕のように鉄板の表面が焼けています。ワッシャーを溶接した部位も痕が残っています。

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これらの痕をロロックサンダーという小さなエアーサンダーで丁寧に削り落とします。

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板金した鉄板の研磨作業を行います。ダブルアクションサンダーというエアー工具を使用します。

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ダブルアクションサンダーに研磨紙を付けて、粗い順に#80、#120、#180、#240と番手を上げて、それぞれのペーパー目を消しながら徐々に板金した鋼板を研ぎ上げていきます。

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粗い番手でいいかげんに仕上げると後々ペーパーの目が出現してしまいますし、一方あまり細かい番手で仕上げ過ぎるとパテの密着性が悪くなりますので、板金した鋼板の研磨は#240の研磨紙で最終仕上げを行います。
これで、引出しによる板金が完了です。見た目にはへこみはすっかり元通りになっています。

■板金のパテ付け作業

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鉄板を板金して面出しが終わるとパテ付け工程に入ります。
板金で仕上がった鉄板の表面をシリコンオフという溶剤できれいに脱脂洗浄します。

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エアーブローしながらきれいにシリコンオフを拭き取ります。

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当社ではヨーロッパ製の板金パテを使用しています。硬化するととても硬くなるので、研ぐのに苦労するのですが、その分パテ痩せなどの経年劣化が起きにくいパテです。
サクサク楽に研げるパテは、作業性は良いのでしょうが、パテ痩せが起き易いので当社では絶対に使用しません。板金パテは主剤と硬化剤の2液硬化型です。

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硬化剤は主剤に対し2%の量を混ぜるのですが、多くの板金職人はこの2%を目分量で混ぜてしまいます。インターパシフィックでは修理品質を一定にするため、たとえ2%でも目分量ではなく、きちんと計量して混合することを徹底させております。

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計量が済むと、パテの主剤と硬化剤を入念に混ぜ合わせます。

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鉄板に板金パテを付けます。

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赤外線ヒーターで加熱してパテの硬化を促進させます。

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パテ研ぎでは、最初はエアー工具を使って研ぎます。

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見た目では判らない僅かな歪や凹凸は、板金職人の手の平の感覚を頼りに研いで取り除きます。

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プレスラインや、パネルとパネルの隙間などの細部も丹念に仕上げます。

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熟練した板金職人の手の平に伝わる感触だけで酷くへこんだパネルも元通りに修復するのです。

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パテを研いだ粉で極力廻りが汚れないように、エアー工具や手研ぎファイルに吸塵ホースを取り付け、集塵機でパテ粉を吸い取りながら作業を行います。

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板金パテを研ぐ研磨紙は粗い順に#120、#180、#240で、それぞれの工程で前段階のペーパー目を消しながら番手を上げて研ぎ上げていきます。

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研ぎ作業で生じる傷は目視では判りにくいのですが、この傷が一つでも残っていると、塗装した後に傷が出現してしまうので、研磨紙の番手を上げる前に研ぎ面にドライガイドコートという黒い粉を塗り、ガイドコートごと研ぐのです。するともし傷が残っているとそこにガイドコートが入り込み、黒い線として残りますので、その線を研いで消すことで傷を残さず仕上げることができるのです。

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板金パテの研ぎの最終仕上げは、#400の研磨紙を付けたダブルアクションサンダーで行います。
インターパシフィックでは、特にパテ痩せを避けるため、ポリパテなどの柔らかいパテは一切使用しておりません。当社で厳選した板金パテだけで最後まで仕上げます。

■付属品の脱着

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塗装作業の際にマスキングの妨げになる車の外装部品を取り外します。外装部品の取り外しは、状況によって板金作業と前後する場合があります。
このメルセデスベンツの場合ではドアパネルとリアフェンダーパネルの板金塗装作業ですので、その2パネルを塗装するうえでマスキングがし易いように、そしてきれいに塗装を仕上げることができるように、外装部品を取り外します。

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ドアパネルの塗装のためには、サイドミラー、ドアハンドル、水切りのモールを取り外します。

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リアフェンダーの塗装のためには、サイドウインドウガラス及びモール、テールランプ、リアバンパーを取り外します。これらの部品がボディーに付いたままでは、部品がパネルに密着していたり、あるいはパネルとの隙間が狭すぎたりするため、この後工程で行う下処理の研ぎ作業が不十分になり、その結果塗装の密着不良が起きたり、仕上がりの美観に影響します。

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外装部品を脱着すればその分工賃は発生するので、これらを脱着せずに修理費用を抑えるという方法を提案する業者さんもいるようですが、仕上がりが悪かったり、後になって塗装が剥がれてくることになりますので、当社ではお勧めしておりません。

板金作業はここまでで、この後は塗装職人による塗装の工程に入ります。そして塗装の工程が全て終わると再び板金職人が取り外した部品を車に組み付け、板金塗装修理は完了します。

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車の塗装工程

■塗装の下処理作業

板金工程が終わると塗装工程に入ります。塗装職人はサフェーサーの塗装、研ぎと言った下地処理を行い、熟練した技でその車本来の塗装の肌艶を復元させます。
塗装作業は一切ごまかしの効かない、とても神経を使う作業です。車本来の肌艶を復元させる技術もさることながら、現車と同じ色を作る調色は経験だけでなくセンスが重要になってきます。
板金と外装部品の取り外しを終えた車は、板金職人から塗装職人に引き継がれます。

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板金職人がダブルアクションサンダーで#400研磨紙の目にパテ研ぎを仕上げた後、塗装職人がさらに細かい番手の#600研磨紙で足付け作業を行います。
パテを付けた面よりさらに広く#600研磨紙で研ぎ上げます。研ぎ作業で生じる深い研ぎ傷を各工程で完全に取り去ることが何より大切となります。

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サフェーサーを塗装する面をシリコンオフという溶剤で脱脂洗浄します。使い捨てのポリプロピレン素材のワイピングクロスに溶剤を付け入念に脱脂を行います。このワイピングクロスは拭き取り面にチリやケバが残らない素材です。

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パテを付けた面より広い範囲をマスキングします。

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液硬化タイプのサフェーサーを塗装して板金した部位を完全にシールします。

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サフェーサーの塗装が終わると赤外線ヒーターで加熱乾燥を行います。塗面の表面温度に気を配りながら、60分程しっかり熱を加えます。
加熱乾燥後は充分にクールダウンさせる時間をとり、塗膜を完全に硬化させます。

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サフェーサーがしっかり硬化したら、研ぎ作業を行います。目視では全く判らない、熟練した塗装職人の手のひらの感触でないと判らないレベルの僅かな歪みを確認し、取り除きながら平滑に仕上げていきます。
インターパシフィックでは、塗装前の足付けは最終的に#1500のペーパーで行うのですが、サフェーサーの塗面は先ず#400の研磨紙で研ぎ始めます。粗い番手の研磨紙でデコ(凸凹)を取り、平らに研ぎ上げます。

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#400で研ぎ終えると、#600、#800と研磨紙の番手を上げていきます。この工程は全て塗装職人の手作業で行われ、手の平に伝わるわずかな歪みを平滑に研いで取り除き、板金したパネルの面を元通りに復元させるのです。

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サフェーサーの研ぎ作業で生じる傷は目視ではほとんど判らないのですが、この傷が一つでも残っていると、塗装した後に傷が出現してしまうので、研磨紙の番手を上げる前に研ぎ面にドライガイドコートという黒い粉を塗り、ガイドコートごと研ぐのです。するともし傷が残っているとそこにガイドコートが入り込み、黒い線として残りますので、その線を研いで消すことで傷を残さず仕上げることができるのです。

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サフェーサーを塗装した面を#800の研磨紙で研ぎ終えると、塗装する面全ての研ぎ作業と足付け作業を行います。塗料の密着性を高めるための重要な工程です。

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最終的な足付け工程では、#1000の研磨紙で研ぎ始め、#1300、#1500と番手を上げて全面仕上げていきます。

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取り外したリアサイドウインドウガラスの取り付き面等もしっかり足付けを行います。

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クリア塗料をぼかす部位がある場合は、塗装後の磨き作業を考慮し、#2000、#3000とさらに目の細かい研磨紙で足付けし、最後に粗目のコンパウンドで磨いて足付けします。
これで塗装前の下地処理は完了します。

■塗料の調色

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塗料やシンナーなどの有機溶剤は、少量危険物貯蔵庫に保管しております。安全のために24時間換気されています。

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自動車塗装の調色には100種類近くの原色塗料を用意していなくてはならないので、塗料が固まってしまうのを防ぐため、攪拌機能を持ったミキシングマシーンというラックに収納し、定期的に塗料の撹拌をしています。

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塗装する車の色を再現するために塗料の調色を行います。先ず車のカラーコードからその色の配合を調べます。
塗料の配合は塗料メーカーのWEBサイトで調べることができます。
調色する色はメルセデスベンツのパラジウムシルバーで、カラーコードは792です。
配合データをプリントアウトして調色開始です。
配合データには1リットルの塗料を作るうえでの配合がグラム表示で記載されています。
パラジウムシルバーという色は、2種類(粗目、中目)のシルバーメタリックとメタリックの配列をコントロールするための添加剤、そして黒、白、青、赤錆色、黄土色の5色からできています。

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これらを配合通りに正しく計量します。

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配合した塗料を入念にかき混ぜます。ここで出来上がった色をそのまま現車に塗装しても、色はぴったりとは合いません。大なり小なり現車の色とは異なるので調整が必要です。
そしてこの調整が塗装職人にとって最も難易度が高い仕事で、経験とセンスが必要です。

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塗料メーカーの配合通りに作った塗料をテストパネルに塗装します。クリア塗料も塗装して現車に塗装するのと同じ工程で作成します。

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テストパネルを現車に当てがい、様々な角度から色の差異を確認します。
そして配合されているメタリックや原色の量を微調整して色を完成させていきます。
色が合うまで何度でもこの作業を繰り返します。

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色合わせは自然光の下で見た方が合わせやすい場合と室内で人工太陽灯を照射して見た方が合わせやすい場合があり、それらは色によって使い分けしています。

■塗装のマスキング

下地作業と塗料の調色が終わると、いよいよ塗装作業に移ります。
車を塗装ブースに入れてマスキング作業を行います。
マスキングは塗装する面以外の部位に塗料が付着しないための作業なのですが、マスキングの技術が塗装の仕上がりに大きく影響します。

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塗装のマスキングでは「ダブルテープ」と呼ばれる技法を多用します。
「ダブルテープ」というのは、テープを幅5分の1程の所で折り曲げ、糊面通しを合わせたテープのことをそう呼びます。テープを折って糊面通しを合わせると、例えば幅10mmのテープが8mm程に仕上がります。
8mmの内6mmは糊が付いていて、2mmには糊が付いていないテープが出来上がるわけです。

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画像のように、器用に8mm幅の長いテープを矢印の方向に延ばして、沢山作ってマスキングに使います。
テープをそのまま貼ってしまうと、塗装後にテープを剥がしたとき、くっきり塗料の段差ができてしまいます。ダブルテープはこの段差を解消するために使用します。
塗料が入るか入らないかギリギリの隙間を作るわけです。

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画像はリアフェンダーの前端にダブルテープを張っている様子です。

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ダブルテープでマスキングすると、こんな感じで仕上がります。

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画像を拡大すると、ダブルテープでできた隙間がお判りいただけるかと思います。
塗装後にダブルテープの隙間にできた薄い塗膜を軽くコンパウンドで磨けば段差のない綺麗な仕上がりになるのです。

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塗装するパネルの外周は基本的に全てダブルテープでマスキングします。

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マスキングが終わると、塗装する面の脱脂作業を行います。
ポリプロピレン素材の使い捨てのワイピングクロスにシリコンオフという溶剤を付け入念に脱脂を行います。このワイピングクロスは拭き取り面にチリやケバが残らない素材です。

■塗装作業

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車の塗装は、色の塗装(ベースコート)とクリア塗装(トップコート)の2工程に分かれます。
人気のあるホワイトパールは3コート塗装で、その場合、白のベースコートを最初に塗装し、次にパールを塗装し、最後にクリアを塗装する3工程で塗装します。
画像のメルセデスベンツのパラジウムシルバーの場合は、2コート塗装なので、調色済みのベースカラーを塗装し、その上にトップコートのクリア塗料を塗装します。

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塗装作業は全て塗装ブースの中で行います。塗装ブースの室内は、ゴミやホコリが付着しにくい環境になっています。
空気は給気装置によって外気を室内に取り入れるのですが、一次フィルターで外気中の埃を90%以上補集し、さらに天井一面に敷き詰められた二次フィルターを通すことで、5ミクロン以上の埃等を補集します。
クリーンな空気は天井から床に向けて上下に圧送され、排気ファンが空気を床下から吸い取り、排気ダクトを通じて屋外に排出されます。排気側にも一次、二次のフィルターがあり、塗料のオーバーミストを除去します。
塗装ブースの室内の容積はおよそ80㎥ありますが、この空間の空気がわずか15秒ほどで入れ替わる量の外気を取り入れています。

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こうした環境で塗装作業を行うことで、高いクオリティーの塗装が可能になります。

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塗装が終わると、塗料を硬化させるために加熱乾燥を行います。塗装ブースの室温を60~70℃に昇温し、1時間程熱を加えます。
塗装ブースの運転モードを「乾燥」モードにすると、バーナーが着火し、外気を加熱します。
乾燥モードになると導入する空気の量を大幅に絞って、温度上昇を助けます。

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塗膜が完全に硬化したら、磨き作業に入ります。
塗装職人がどれほど見事に塗装しても、磨き作業は不可欠です。
磨きの目的は艶を出すためではありません。
塗面の上に付着した小さなゴミの除去と塗装の肌調整のためです。
ゴミ付着ゼロが理想ですが、上述したような塗装ブースの中での作業でも極々小さなゴミは付着してしまいます。それも最後の塗り込みの時に数個付着してしまうのです。
その為、ゴミを粒子の細かい#2000、#3000程度の研磨紙で削って除去します。
塗装の肌はオリジナルの状態より、ほんの少しだけ粗く仕上げ、磨きによって調整します。
磨き作業はポリッシャーで行います。粒子の異なる数種類のコンパウンド、研磨力の異なる数種類のバフを組み合わせて、磨き上げます。

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こうして塗装工程が終わると、板金職人が取り外した部品を取り付け板金塗装作業は終わります。
最後にお車の室内を清掃し、ボディーを洗車し、最終仕上げを行い完成となります。

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ご覧のように酷くへこんでしまっていた車のボディーも

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まるで何事も無かったように元通りになります。

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車のボカシ塗装技術

私達は車の傷やヘコミの板金塗装を見積もる際、その傷やヘコミが板金修理で直るのか、それとも交換を要するのかを見極めるのと同時に、その車の塗装作業の場面をイメージします。このヘコミは鈑金するとしてパテが入るのはどのくらいの範囲だろうか、すると(サフェーサーはパテより広い範囲で塗装するので)サフェーサーでシールする範囲はどこまでだろうか、どれくらいの範囲を塗装すれば隣接するパネルとの色の差異を生じさせずにきれいに仕上げられるだろうか、という具合に先ずイメージするのです。特に自費修理の場合には、塗装する範囲によってお客様の修理費の負担が変わってしまうので、どうにかして修理費用を抑える手立てはないかも踏まえて塗装範囲を慎重に検討します。
塗装する範囲を決めるうえで、私たちは「ぼかす」「切る」という表現を頻繁に使います。車の塗装では、ぼかせるのかぼかせないのか、そしてどこでぼかすのか、どこで切れるか、がとても重要になります。塗装の出来栄えにかかわるのは言うまでもないのですが、修理費用に直結するからです。
ですから、お見積りにご来店頂くお客様には必ず、車を前にして塗装の「ボカシ」や塗装を「切る」ということについてできるだけ解りやすくご説明しています。

塗装の「ボカシ」は塗料を薄めて塗ることで、ボディー色であるベースコートのボカシとトップコートであるクリア塗料のボカシの2通りがあります。塗装を「切る」のはトップコートであるクリア塗装をどこかの部位で切ることです。

■色のボカシ

1412bankin-75車の塗装色は、腕の良い塗装職人がどんなに高い精度で調色しても全く同じ色を再現することはできません。95%、98%と元色に限りなく近づけることはできても100%にすることはできないのです。

1412bankin-79調色を何度も繰り返し職人の目にはピッタリと色が合った状態だとしても、実際には100%ではありません。そのため塗装職人はベストを尽くして調色したうえで、色をぼかすのです。
例えばドアパネルを板金した場合、そのパネルの中で色をぼかすことができれば隣のフェンダーパネルとの色の差異は生じませんので板金したドアだけを塗装すれば済みます。しかしぼかすことができなければ、隣接するパネルをぼかさなくてはなりません。隣のパネルが無傷であってもドアとの近接部分だけにベースコート(色)を塗装し、全面にトップコート(クリア塗料)を塗装することによって色の差異が出ないようにしなくてはなりません。

【ダメージのあるパネル内で色がぼかせる場合】
bankin-topメルセデスベンツCクラスの2ドアクーペですが、左のドアとリアフェンダーを大きくへこませてしまい、板金でヘコミを修理しました。

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1504tosou1画像は、鈑金・サフェーサー塗装・下地処理の作業が完了し、塗装ブースの中でマスキング(養生)と脱脂を終え塗装する準備が整った状態です。
赤線で囲った部位がサフェーサーでシールされた修理部位です。
赤枠の外側はクリア塗膜を研いで足付けしています。サフェーサーが塗装された部位には調色したベースコートを塗装して色をしっかり染めなくてはなりませんが、クリア塗膜を研いだだけの部位は、ベースコート(色)を塗装しなくてもトップコート(クリア塗料)を塗装すれば色艶は元通りに復元します。
このケースでは、サフェーサーでシールした修理部位と隣接するフロントフェンダーやトランクリッドとの間に色をぼかすだけの十分な距離がありましたので、板金した2パネル内で色を散らしてぼかし、フロントフェンダーとトランクリッドの境界部位に色を塗装しないようにできました。

1504tosou2先ずサフェーサーでシールされた部分にベースコートを吹付けます。通常2回の塗装で色は染まりますが、赤など染まりが悪い色の場合には3~4回塗り重ねることもあります。

1504tosou3色を染めた部位を中心に外側に向けてグラデーションをかけるように徐々に薄く薄く色を吹付けます。メタリックや淡色車の場合には色をシンナーでさらに希釈して広範囲に色を散らしてボカシます。画像のウェットな部分がベースコートを吹付けた部分で、フロントフェンダーとの境界部は色がかかっていません。

1504tosou4リアフェンダーの後部にも色は吹付けていないので、トランクリッド、さらにはリアバンパーとの境界部にも色はかかっていません。

1412bankin-93このようにしてパネル内で色をぼかし、ベースコートが乾いたらクリア塗料を全面に塗装します。

1504tosou6画像の矢印で示した部位は養生紙に色がついていないので、クリア塗料が塗装されただけだということがお判りいただけるかと思います。

1504tosou6b完成すれば、パネル内のどこでぼかしたかは判りませんし、どの角度から見ても修理していないパネルとの色の違いはありません。

【ダメージのあるパネル内で色がぼかせない場合】
1504tosou21アルファロメオブレラですが、右のドアを大きくへこませてしまいました。

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1504tosou23ヘコミを板金してパテを付けると、後方は問題ないのですが、隣接するフロントフェンダーとの間には色をぼかすための十分なスペースがありません。

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1504tosou25その場合にはダメージの無いフロントフェンダーにボカシ塗装をします。
フロントフェンダーの塗膜を足付けし、ドアに接する部位に赤のベースコートを塗装します。フェンダー全面を塗ってしまうと、ボンネットとフロントバンパーとの色の差異の問題が生じますので、前方に向けて色を薄くしてぼかします。そしてクリア塗料をドアとフロントフェンダーの2面に塗装します。
メタリックやパールが含まれ、見る角度で色調が違って見える色は、調色が上手くできたと思っても実車に塗装してみると大なり小なり色の違いが出てしまいますが、このアルファロメオの赤のようにメタリックやパールを含まないソリッドカラーであれば、ブロック塗装と言いますが、隣接パネルをぼかさずにドアだけを塗装することもございます。

1504tosou26保険修理であれば、色の違いが解消できないリスクを当社もお客様もとる必要はないので隣接するパネルはぼかしますが、自費修理の場合には、色合わせのためにフロントフェンダーを塗装するかどうかで修理費用が変わってしまいますので、十分なご説明をしたうえで、最終的にはお客様にご判断していただきます。
修理費用を抑えるかノーリスクな修理品質をとるかということです。
色の違いというのは感じ方に個人差があります。プロである私達が合ってると思っても、車が傷付いたことによるネガティブな感覚のせいなのか、お客様には色が違って見えてしまう場合もありますので、塗装に関してはできるだけ解りやすく丁寧にご説明するように心がけています。

1504tosou27もう1例は左のリアドアとリアフェンダーをこすってしまったプジョー508SWです。

1504tosou28リアフェンダーは板金できましたが、ドアパネルはダメージが酷く新品パネルに取替えました。

1504tosou29ボディー色はホワイトパールです。新品パネルですので全面に色をかけなくてはなりません。
フロントドアを塗装しないと前後のドアで色の違いが出てしまいますので、フロントドアにボカシ塗装を行いました。
フロントドアの後部から前に向かってグラデーションのように色をぼかします。フロントフェンダーに近い部分には一切色をかけません。
そして前面にクリア塗料をかければ左側面はどの角度から見ても色の違いが無いということになります。

板金塗装の修理費用は、キズやヘコミの大きさによって板金する時間が変わるので工賃が上下しますが、大きさよりむしろどこにキズやヘコミが付いたかのほうが、それによって塗装する範囲が異なってくるので、修理金額への影響は大きいかもしれません。少し大きめでもドアの中央部がへこんでいればそのパネル内で色をぼかすことができますが、小さな傷やヘコミであっても隣のパネルに近いところにあれば、隣のパネルまで塗装しなくてはならなくなるからです。

■クリア塗装のボカシ

私達は必要に応じてクリア塗料を薄めてぼかすことがあります。クリア塗料をぼかす目的は、自費修理の場合の費用の削減です。代表的なのは、リアフェンダーを塗装する際にCピラーでクリア塗料をぼかす場合とバンパーの部分補修です。塗り面積を小さくすることで修理費用をできるだけ低く抑えるのです。

1504tosou31リアフェンダーを塗装する場合、保険修理であればCピラーからルーフサイドを通してフロントピラーの先端のパネルの切れ目までクリア塗装を行うのですが、自費修理の場合にはCピラーの狭い部分でクリア塗料をぼかすことがよくあります。

1504tosou5ぼかしたい部位にベースコートの塗料ミストがかからないように養生して色を塗装します。

1504tosou7養生紙をはがしてクリア塗装を行い、最後にCピラーのできるだけ狭い部位に塗料を徐々に薄めて塗装し、ぼかします。
塗膜がしっかり硬化してから磨きをかければ全く判らなく仕上がります。

クリア塗料をぼかすテクニックを使うとバンパーの傷の修理を安くきれいに仕上げることができます。

20130206bmw3BMWのリアバンパーですが、この程度ならバンパーを一本塗装しなくてもクリア塗料をぼかしてバンパーの半分ほどの面積を塗装すれば綺麗に仕上がります。
プロが見てもどこでどうぼかしたか判らなくなります。

20130206bmw5バンパーの傷を削り落として平滑に仕上げます。

20130206bmw6修理した部分をサフェーサーでシールして

20130206bmw8バンパーの幅の狭い部位でクリア塗料をぼかします。

20130206bmw9なぜ狭い場所でぼかすのかと言いますと、あくまでも透明なクリア塗料を薄めて塗装しているだけですので、その部位の塗膜の厚みは極極薄く耐久性に乏しいのです。ですからそのリスクを極力少なくするためにできるだけ狭い部位でぼかすのです。

■絶対にしてはいけないボカシ塗装とは

修理費用を安くするためだからと言ってどこでぼかしても良いというわけではありません。
「安かろう悪かろう」、「安物買いの銭失い」という喩がありますが、格安で短時間で作業が終わる修理ではとんでもない仕上がりになる場合があるので注意が必要です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA最小面積の塗装でとにかく安く修理を依頼したら画像のような酷い仕上がりになってしまった実例です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAリアフェンダーのホイールアーチにできたわずか3㎝ほどのヘコミを格安修理業者に依頼して15,000円で修理したそうですが、酷すぎる仕上がりで戻ってきたそうです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA当社で板金をやり直しリアフェンダーを塗装し直しました。

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OLYMPUS DIGITAL CAMERAクリア塗料はピラーの狭い部位でぼかしました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA格安業者さんはとにかく小さい面積ということで赤線のようにぼかしたのでしょう。クリア塗料のぼかしは、赤枠のようなとにかく狭い部位で、というのが鉄則です。

■クリア塗装をプレスラインで切るという技法

ボカシ塗装以外に塗装職人がよく使う方法として、クリア塗装をプレスラインで切る方法があります。パネルの角度の付いたラインの頂点でクリア塗装を切り、なおかつその痕を判らなくする技法です。
この塗装をする目的も、自費修理の場合のコスト削減です。

1504tosou33BMWの左リアドアとリアフェンダーに付いた傷とヘコミをこの技法を使って修理しました。

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1504tosou9画像は板金・サフェーサー塗装・下地処理を終え、塗装ブースの中でマスキング(養生)を始める状態です。
緑線のプレスラインの頂点でクリア塗装を切ることで、矢印で示したリアドアの水切りモールとサイドウインドウガラスの脱着をしないできれいに塗装を仕上げます。
モールやガラスは取り外して塗装するのが、塗装を綺麗に仕上げる本来の方法なのですが、水切りのモールは取り外すと再使用できない可能性が高く、そうなると部品交換が必要になります。サイドウインドウガラスの脱着工賃と合わせると3万円位費用がかかることになるので、プレスラインでクリア塗装を切ることができればその分修理費を抑えることができます。
プレスラインで切れるか否かは、サフェーサーでシールした修理部位の際とプレスラインとの間にベースコート(色)をぼかせる充分な距離があるかどうかによります。
プレスラインの頂点で透明なクリア塗料を上手く切るから痕が判らなくできるので、そこに色がかかってしまうとどうしても痕が残ってしまいます。

1504tosou11クリア塗装を切りたいプレスラインの頂点を露出させた状態でマスキング(養生)を行います。

1504tosou12そしてプレスラインには「ダブルテープ」を貼り付けます。「ダブルテープ」というのは、テープを幅5分の1程の所で折り曲げ、糊面通しを合わせたテープのことをそう呼びます。テープを折って糊面通しを合わせると、例えば幅10mmのテープが8mm程に仕上がります。
8mmの内6mmは糊が付いていて、2mmには糊が付いていないテープが出来上がるわけです。

1504tosou13画像のように、器用に8mm幅の長いテープを延ばして、沢山作ってマスキングに使います。
テープをそのまま貼ってしまうと、塗装後にテープを剥がしたとき、くっきり塗料の段差ができてしまいます。ダブルテープはこの段差を解消するために使用します。
塗料が入るか入らないかギリギリの隙間を作るわけです。

1504tosou14塗装を切りたいプレスラインに沿って、ダブルテープを慎重に貼り付けていきます。

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1504tosou17ダブルテープを貼り付けるとマスキング完了です。プレスラインできれいに塗装を切るのは熟練した技術が必要です。ぼかすのも難しいのですが、切るのもとても難しいのです。

1504tosou20切り口を判らなくするためには、ダブルテープを貼った付近の塗装の膜厚をやや薄くする必要があります(ボカシではありません)。通常よりも薄い膜厚でも塗肌を整えなくてはなりません。
ダブルテープ直近までしっかりと塗膜を付け、かつテープには塗着させないために、塗面に対してガンの角度を工夫したり、エアー圧や塗料の吐出量、さらにはガンのストロークスピードを調整する職人の技が大切になります。

1504tosou19クリア塗装の切り口は塗膜が硬化してからサッと磨けば完全に消えて判らなくなるのです。
目を凝らして見ても、まるで何事も無かったかのように完璧に仕上がります。

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コーティング施工前の洗車と鉄粉除去

コーティングを施工する前には、しっかりとボディーの磨き作業を行います。
ガラス系コーティングの場合、コーティング剤を塗り込むことで塗装に艶が出るわけではなく、塗膜をポリッシュ(研磨)することによって艶を出しますので、磨き作業は仕上がりを大きく左右する一番重要な工程となります。
新車ではなくすでにオーナーさんがお乗りになっている車の場合、ボディーには少なからず水垢や鉄粉が付着していますので、磨き作業の前には丁寧に水垢取りや鉄粉除去を行う必要があります。

洗車には、プロ専用のアルカリ性のシャンプーを使います。カー用品店などで売られている市販のシャンプーより格段に洗浄力が強く希釈倍率を変えることによって洗浄力を調節し、主に水垢を落とします。
強い洗剤なので、1パネル毎に水でよく洗い流しながら洗車していきます。エンブレム周りやパネルの隙間にこびりついた汚れは、柔らかいブラシを使って洗浄します。

水垢などの汚れを落とした後は、ボディーに付いた鉄粉を除去します。鉄粉は目視では付着しているかどうかわからないのですが、鉄粉が沢山付着している車の場合は、水で濡れたボディーを手で滑らせるように触ると塗膜がザラザラするのですぐにわかります。
車のボディーに鉄粉が付着したままの状態だと、磨き作業の際にポリッシャーのバフに鉄粉が絡んでしまいますし、そもそも磨きで鉄粉は落とせません。

ですから磨き作業の前にボディーに付着した鉄粉を完全に除去する必要があります。
鉄粉除去は専用の薬剤を使います。洗車を済ませた車のボディーに薬剤を吹き付けると鉄粉と反応して画像のように赤紫に変色します。要は鉄粉が溶けるわけです。

この薬剤は、ボディーに付いた鉄粉だけでなく、ホイールのブレーキダスト落としにも良く効きます。

車の塗膜に付着した鉄粉は、薬剤の力だけでは落ち切らないので、同時に鉄粉除去専用のネンドを使います。
ネンドパッドと言いますが、表面がゴム質なパッドです。ダブルアクションサンダーに装着して使うのですが、ボディーを傷つけないいように当社では手作業で使用しています。

専用薬剤によって鉄粉は溶けて柔らかくなっているので、ネンドパッドでさほど強くこすらなくても簡単に鉄粉は除去できます。

鉄粉除去が完了したら、充分にボディーを水洗いして薬剤を洗い流します。この作業までを終えてから磨き作業に入ります。
新車の場合は、水垢落としや鉄粉除去の工程がありませんが、すでにお乗りになっている中古車は程度の差こそあれ水垢や鉄粉がついていますので、その程度によってコーティングの施工費用も違ってくるわけです。

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コーティング施工前の車の磨き作業

車を塗装した後やコーティング施工時には、塗膜を研磨する作業を行います。車を塗装した後の磨き作業と、コーティング施工時に行う磨き作業は、目的は異なりますが工程はほとんど同じです。ですから塗装の職人は、コーティングのプロでもあるのです。自ら塗装した塗膜をその車のオリジナルな塗装状態に磨いて仕上げ、お客様の大切なお車を何事も無かったかのようにする磨きのテクニックは、コーティングの施工にも活かされています。
塗装後の磨き作業は、艶を出すためではなく塗り肌を綺麗に仕上げるための作業ですが、コーティング施工時に行う磨きは、艶を出すための磨き作業です。塗膜に付いた小傷や雨染み等によって車の塗装は時間と共に表面がくすみ、艶が悪くなります。そのためコーティングを施工する前には、磨き作業を行って小傷や雨染等を落とし、艶を出す必要があります。そして「磨き」によって塗装表面をツルツルに仕上げコーティング剤のノリを良くします。
それではコーティング施工時に行う磨き作業について、経年劣化によって塗装がくすんでしまった黒のレクサスIS250を例にご説明します。

画像は、洗車し、水垢や鉄粉などを除去した所謂丁寧に洗車された状態です。それでもボディーは小傷や雨ジミが多く、経年劣化等によって塗装がくすんで白ボケしています。


この状態の塗面を磨くと、どのくらい塗装の艶が蘇るかが一目で判るように、ボディーの一部分だけを磨いてみました。ボンネットの赤枠部分が磨いた部位です。

リアフェンダーの赤枠内が磨いた部位です。一皮剥けたような感じで、ぴかぴかになります。


車の塗装の研磨は、ポリッシャーとバフとコンパウンドを用いて作業します。
ポリシャーは研磨するための工具ですが、磨きの工程や磨く部位などによってさまざまな種類のポリッシャーを使い分けます。
回転トルクが高く研磨性能に優れたシングルポリッシャー、仕上げ磨きに使用する星形に振動偏芯回転をするギアアクションポリッシャー、遊園地のコーヒーカップのような動きをするダブルアクションポリッシャー等です。


また形状の複雑な部位を磨くための小さなサイズのポリッシャーも数種類使い分けます。


ポリッシャーに取り付けるバフは、ウール、スポンジ、ウレタンなどの素材でできており、素材によって研磨力が異なります。粗磨きの工程ではウールバフを使い、スポンジバフやウレタンバフで仕上げていきます。


コンパウンドは研磨粒子の粗さによって研磨力が異なります。ポリッシャー、バフ、コンパウンドという3つの要素を塗装の状態に応じて組み合わせて磨きます。


最初の粗磨きの工程は、シングルポリッシャーにウールバフを装着し、粗目のコンパウンドでしっかり磨きます。この段階で研磨可能な傷、くすみ、雨染みなどは全て磨き落とします。
研磨作業は、言うなれば「傷付けて傷を落とす」作業ですので、単一回転で強く磨くことによって研磨傷が付きます。オーロラ状にギラギラした模様が研磨傷です。


このギラギラした研磨傷は、ポリッシャーを振動偏心回転のギアアクションポリッシャーやダブルアクションポリッシャーを使い、粒子の細かいコンパウンドで磨くことによって除去でき綺麗に仕上がります。


太陽光や水銀灯などの光をあてると判るオーロラ状の研磨傷を除去する作業はとても繊細な作業です。研磨が「傷を付けて傷を落とす」作業である以上、いかにポリッシャーの回転を低トルクにし、バフを柔らかくし、コンパウンドの粒子を細かくしても研磨傷を完全に除去するのは至難の技です。
研磨傷はあてる光の種類によって見え方が変わります。そのため当社では、数種類の異なるライトを使い、傷を可視化した状態で磨き残しが無いように慎重に作業しております。


磨き作業は、数種類のポリッシャー、バフ、コンパウンドを組み合わせて行う繊細な作業です。そのためポリッシャーを当てにくい部位の磨き作業は大変手間がかかります。
極力手磨きはしたくないので、小さなサイズのポリッシャーや変わった動きをするポリッシャーを駆使します。
バンパーやスポイラーの細部などは、ミニサイズのポリッシャーと直径が10cmに満たないバフを使って作業します。


ドアハンドルのポケットはハンドルが邪魔して回転するポリッシャーは使えません。


そのため当社では左右にスイングする小さなポリッシャーを使っています。

ドアの開閉の際、爪で傷付くドアハンドルのポケットもしっかり磨けます。

磨き作業の最終段階では、振動偏芯回転をするギアアクションポリッシャーまたはダブルアクションポリッシャーにウレタンバフを装着し、超微粒子コンパウンドで仕上げます。

磨き作業を終え、コーティング施工が完成すると

作業前のくすんだボンネットが

新車のような艶々な状態になりました。

塗装のプロが手間をかけて丁寧に磨き作業を行うと

車の塗装はご覧の通りに生まれ変わるのです。

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大切なお車を何事も無かったかのように

大切なお車を
何事も無かったかのように

代表 千村尚紀

インターパシフィックは長年にわたり高級輸入車の板金塗装を数多く手掛け、技術を磨いて参りました。
難易度の高い修理に対応する最新設備を導入し、厳選した塗料や材料を使用することで、高い修理品質を実現しております。

私達は、大切なお車が「ちゃんと元通りに直るのだろうか?」というお客様の不安を安心と喜びに変えることを最大の使命と考え、完成まで一切手を抜きません。
どこをどう直したのか全く分からないように、完璧な仕事を心掛けております。

修理方針

鈑金塗装に対する当社の考え方や作業工程について詳しくご説明しています

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プロの本音

お客様に是非とも知って頂きたいことを鈑金塗装のプロが本音でお伝えします

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お客様の声

修理させていただいたお客様より沢山のご評価とコメントを頂きました

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