フェラーリ F355 (FERRARI) 保険を使った飛び石修理です。
フェラーリのイベントの帰り道、東名高速道路のオービス設置地点で前方のトラックが急ブレーキをかけたせいで、フェラーリ F355 チャレンジは無数の飛び石を浴びて全身が傷だらけになってしまいました。
お客様は車両保険に加入されていたので、今回は保険を使って修理することになりました。
<保険の等級据置事故についての解説>
普通、車両保険を使って事故した車を修理すると翌年のノンフリート等級が3等級下がってしまうのですが、今回のような飛び石による傷の修理は、「飛来中または落下中の他物との衝突」ということで、等級据え置き事故と見なされ、事故によって保険金が支払われても翌年の等級が今年度の等級と同一の等級に据え置かれます。
この等級据え置き事故が適用されるのは自然災害や避けようのない被害の場合で、今回の飛来中または落下中の他物との衝突以外では、火災、爆発、盗難、台風、落書きなどが適用の対象となります。
損傷状況:
保険会社のアジャスターさんと一緒に飛び石による傷を確認したところ、写真では判りづらいのですが、何とリアバンパーを除くボディーのすべてに飛び石の傷が確認され、保険での修理が認定されました。フェラーリは車高が低いため後ろのほうまで飛び石傷がついてしまうことがあるんですね。
リアのエンジンフードにも
カーボン製のリアスポイラーにも飛び石の傷がついてしまいました。
フロントガラスにも当然傷はついており、ガラス交換が認められました。
リアバンパーだけは保険の修理範囲ではありませんが、この際サービスで一緒に塗装し、オールペイントをするということになりました。
修理内容:
室内にはロールバーが装着されています。これはちょっとやっかいです。
フロントガラス、リアサイドウインド、リアウインドガラスの交換または脱着に際し、ロールバーが邪魔になるため、結局写真のようにシートも含め室内ほとんど全部をとりはずしました。
外装品を分解し、フェラーリF355のボディーの塗膜をダブルアクションサンダーで研ぎ落としダメージを取り除きます。細部は手作業で研ぎます。
きれいに脱脂した後、サフェーサーを塗装します。プライマー塗装とはいえゴミを付けないようにするため、インターパシフィックでは塗装ブース内で作業します。そしてその後塗装ブースの中で加熱乾燥を行います。
ボンネットやバンパー、その他のバーツも飛び石による傷を研ぎ落とします。
そして塗装ブースの中でサフェーサーを塗装し、充分乾燥させます。
サフェーサーは手作業で研いで仕上げます。写真は下処理とマスキングを終え、塗装を待つフェラーリ F355 チャレンジです。
飛び石で傷ついたフェラーリを綺麗に生まれ変わらすために最も重要な塗装作業です。フェラーリの塗装の高級な質感を出すべく丁寧に丁寧に塗り上げていきます。
満足いく塗装ができました。
フロントフードやリアエンジンフードは最高の塗装の質感を出すためにわざわざ別に塗装します。
バンパーの塗装にはクリア塗料に柔軟剤を添加し、飛び石による傷がつきにくくします。
サイドパネルやサイドステップカバー等も柔軟剤を添加した塗料を使って塗装します。
カーボン製のリアウイングもクリア塗装し、ピカピカになりました。
フロント、リヤなど必要な各部に艶消しのブラックを塗装します。フェラーリのオリジナルの塗装は赤色の塗装の上に黒が塗装されているのが手で触ってわかりますので、それにならって後から黒を塗ります。
今回の保険修理とは関係ないのですが、お客様が中古で入手したフェラーリ F355 CHALLENGE純正のマグネシウム ホイールを白く塗って欲しいとのオーダーをいただきました。
マグネシウムは下処理が非常に困難で、専用のプライマーが必要です。
修理結果:
ついに完成しました。部品調達の問題もあり、随分長い期間お預かりさせていただくことになりましたが、オーナーさんは「まだ?」と私達を急かすこともなく、気長に完成を待ってくださいました。工場には毎週のように途中経過を見にいらしていましたが・・(笑)
時間と手間を充分かけて作業させていただきフェラーリ F355 チャレンジは新車のように生まれ変わりました。
保険の修理協定金額に関しましては、フェラーリという車の特性上、高額になってしまいます。それは決してフェラーリが高い車だからではなく、それだけ手間をかけないとキレイに仕上がらない車だからです。
また、フェラーリの板金塗装の手間はその都度異なるため、修理金額だけが独り歩きすると保険会社様にもご迷惑がかかるため、今回は修理代の公表を差し控えさせていただきます。